2024年6月25日火曜日

有吉佐和子『恍惚の人』(新潮文庫)




「老いとは何か?」この根源的な問いに真摯に向き合った衝撃作。 
認知症の義父を介護する嫁・昭子の日々を通じ、高齢化社会の厳しい現実を鮮明に描き出す。

真夜中に叫ぶ老人、献身的に世話をする家族。その光景は読者の心を深く揺さぶる。 

しかし、この物語は単なる悲哀の連続ではない。

老人の愛おしさ、介護する側の強さと優しさ。人間の尊厳と家族愛の深さが胸に迫る。 

40年以上前の作品でありながら、さらに進んだ超高齢社会の現在にも通じる普遍性を持つ。

老いゆく親、そして避けられない自身の未来。この小説は、私たちに何を問いかけるのか。

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