2024年5月30日木曜日

山口 彊「ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆」(朝日文庫)







 

広島と長崎で二度被爆した奇跡の生還者の半生。

 軍の「正義」に疑問を抱えながら、造船技師として広島に派遣されたものの、そこで被爆。 命からがら長崎に逃げ帰ると、またしても原爆に見舞われてしまった。

 戦後は通訳や教師として働き、家族を守りながら原爆症と闘い続けた。 しかし、最愛の息子を原爆症で亡くしてしまう。

 93歳になり、ようやく沈黙を破った著者は尋ねる。 「あの戦争とは一体何だったのか」と。 

二重被爆という類まれな体験から、戦争の本質と人間の尊厳について、重い言葉を読者に問いかける。 命を削られながらも前を向き続けた一人の男の、心痛む証言。 

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